更新日:2019年4月3日|公開日:2018年12月6日

俗説である「メラビアンの法則」

一時期、セミナーや書籍で「見た目が大事」などとしてよく誤用されていたのがメラビアンの法則です。

話し手が相手に与える影響力について、以下のように表現したものでした。

55%=Visual (視覚情報)
38%=Vocal (聴覚情報)
7%=Verbal (言語情報)

この説を引用する講師の中には、

「だから、人は見た目の印象がもっとも大事。話の内容はあまり重視されない」

そんな情報を発信する人もいました。

ですが、以上は「限定的な研究」を「過剰に一般化」した俗説です。

研究自体は、1971年にアメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが発表したもので、数値も上記の通りです。

ただし、その詳細は以下のようなものでした。

被験者は以下の3つを組み合わせた刺激を、研究室で体験。

「顔写真」「声」「単語」

それぞれに「好感」「嫌悪」「中立」の3パターンがある。

例えば、「嫌悪感をあらわす顔」「中立の声」「好感を表現した単語」という感情の矛盾する組合せを披露。

その結果として、被験者が何を意識しやすいかを調査。

【補足】
・ジェスチャーや服装などの見た目は研究対象ではなく、顔写真のみ
・感情を表す単語が調査対象であり、スピーチや会話場面における調査ではない

(参考)
・Silent messages – Mehrabian(1971)
・梶原しげる:【116】メラビアンのうそ ~「プレゼン詐欺」にご用心~ | BizCOLLEGE <日経BPnet>

この研究で分かったのは、
「話し手が好意と反感のどちらとも取れるコミュニケーションをした」場合に、
「聞き手が言葉より、表情や声の調子を重視しやすい」
ということです。

こうした限定的な状況の研究であると、メラビアン自身も発表しています。

しかし、あるジャンルの講師達には都合がよかったようで、「感情にまつわる単語」だけでなく、「話」についても「見た目(非言語)」「声」が大事であるように、解釈を変えて流布されました。

(詳しく調べずに、信じた講師達もいるかもしれません)

現在は、メラビアンの法則についてネット上で検索すると、いくつかのサイトでは正確な情報が掲載されています。

ただ、誤ったまま、あるいは正誤が混在しているものも見受けられました。

視覚や聴覚に訴える表現については、あらためてよく考えた方が良い点もあります。

この点を以降でご紹介します。

何が印象に繋がるのか?

そもそも、人は何を元に印象を決めたり、価値を判断するのでしょうか。

神経心理学では、「認知特性」という言葉があります。
これは、外からの情報を、頭の中で理解、整理、記憶、表現する方法。

医学博士の本田真美さんは、その認知特性を以下のように6分類で提唱しました。

視覚優位者 (1)写真のように二次元で思考するタイプ
(2)空間や時間軸を使って三次元で考えるタイプ
言語優位者 (3)文字や文章を映像化してから思考するタイプ
(4)文字や文章を図式化してから思考するタイプ
聴覚優位者 (5)文字や文章を、耳から入れる音として情報処理するタイプ
(6)音色や音階といった、音楽的イメージを脳に入力するタイプ

出典:『医師のつくった「頭のよさ」テスト~認知特性から見た6つのパターン~』本田真美/著(光文社新書)

ちなみに、その著書には以下の解説も添えてあります。

なお、個人の中で認知特性はオーバーラップしている部分もあり「絶対にこのタイプ」とはっきり線引きできるものではありません。六つのタイプがバランスよく備わっている人もいますし、状況に応じて重複している特性を使い分けている人もいます。もちろん、どんな場においても一つの特性だけを使っている人もいます。

出典:『医師のつくった「頭のよさ」テスト~認知特性から見た6つのパターン~』本田真美/著(光文社新書)

ここで押さえておきたいのは、人によってさまざまなタイプがあるということです。

例えば、話の場面で考えてみると、相手に対する第一印象は、言葉を交わしていないのであれば、見た目で判断することもあるでしょう。

しかし、実際にどれほど視覚が影響を及ぼすかは、個人の認知特性によっても異なると考えられます。

話すときの印象を変えるには

「自分の印象を変えたい」と感じている人にお勧めしたいのは、普段のコミュニケーションにおいて、自分が「何にこだわりがち」か、まずはその傾向を理解していくこと。


・服装やメイク、表情など、見た目の印象を気にしがち

・声の出し方やトーンが気になる

・言葉の選び方や、使い方が気になる

・話の内容にこだわっている

・資料を作成すると、図が少なくて、言葉が多い


基本的に聞き手は「話し手の素敵な点」を探してくれることも多いものです。

だから、完璧に色々なことを意識しなくても、問題はありません。

自分の得意を伸ばすことも、私は大いにお勧めしています。

しかし、どうしても印象を変えたい場合や、コミュニケーションの悩みを改善したい場合に、こうした偏りに気付くことが、改善の突破口になることもあります。

とくに、他人の話し方を観察していると、自分が目を向けてこなかったことを発見できることがあります。

会話やスピーチを聞ける場で、他人を観察して、自分の盲点になっているジャンルを探して見るのもよいでしょう。

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この記事について

【執筆者】古垣博康
【略歴】株式会社ワクリ代表。NHKの番組制作や番組サイト運営に携わりながら、NPOの話し方教室で講師を5年間担当。
現在は話し方のプロアドバイザーとして、話し方のお悩みに役立つレッスンを開催しています。
産業カウンセラー、認知行動心理士。家族は妻と子、猫2匹。
うちの猫
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