こんなお悩みはありますか? |
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・危機を感じやすく、緊張感が生じやすい |
・深く考えずに話をしている気がする |
・昇進や昇格試験、立場にふさわしい話し方が苦手 |
緊張感を抱く人、話すことが苦手な人に多いのが、「直感的、反応的に考えてしまう習慣」です。
例えば、緊張感にとらわれやすく、練習を延々と続けてしまうこともしばしば。
また、理性的にどう話せばよいかを掴めないと、スピーチやプレゼン、仕事上のコミュニケーションで、なかなか話が通用しない事態(相手が理解や、良い評価ができない事態)が起きます。
なぜ、こうした違いが起きるのか。どうトレーニングすると良いのか。
今回のコラムで詳しくご紹介します。
「二重過程理論」をヒントに、話し方を振り返る
2000年に心理学者のKeith StanovichとRichard West心理学者が発表したのが、二重過程理論。
ノーベル経済学賞を受賞したDaniel Kahneman(心理学者、行動経済学者)が著書、ファスト&スローで広めました。
コレ、心理学を学んでいる人には、わりと知られています。
速い思考(システム1) | 遅い思考(システム2) |
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直感的 | 熟考的 |
速い | 遅い |
進化的には古いシステム | 進化的には新しいシステム |
無意識的 | 意識的 |
自動的 | 制御的 |
参考:Dual-process theories of higher cognition(Evans & Stanovich, 2013)
速い思考の解説
ただ速いのではなく「直感を生かして深く考えない思考」です。
太古の世界で猛獣と出会う状況なら「速い思考」を活かす方が、人が生き残る確率が高まるかもしれません。
危機に反応して緊張するのも、こうしたシステムの働きだと言えます。
ちなみに、1+3=4のように、簡単な思考を行う特徴があります。こうした簡単な思考が習慣になっている人が、複雑で論理的な思考を求められる環境に所属すると、なかなか話が通じない、場に馴染めないと感じる人も多いようです。
遅い思考の解説
現代のように理性を使った作業が増えると、遅い思考でじっくり考える場面も増えていきます。
13×24=312のように、脳の負荷が掛かる思考をする特徴があります。
一つの情報をアタマにとどめながら、別の情報を呼び出して作業するような状態です。
そのため、話す原稿をまとめたり、語る要素の優先順位を深く考えることも、遅くじっくり考える思考が関わると考えられます。
どうトレーニングすれば良いのか
例えば、言葉や構築法、伝わり方を深く考察すること。内容を思い出しながら話すこと。
こうした「脳に汗をかくような作業に、ステップを踏みながら慣れていく」ことです。
また、あがりやすい状況でも高反応にならず、理性的に事態と向き合うこと。
自分をセルフモニタリングしてみたり、敏感に反応しやすい考え方、捉え方を認知行動療法などで合理的なやり方に変えていくことも、その一つだと言えるかもしれません。
当会でも、技術と、心理の両面で理性的な話し方に変わるコツをご紹介しています。
ダニエル・カーネマン(2012)ファスト&スロー(上).村上章子(訳)早川書房:東京.
Evans, J. St. B. T., & Stanovich, K. E. (2013). Dual-process theories of higher cognition: Advancing the debate. Perspectives on Psychological Sciences, 8, 223-241.
Stanovich, K. E., & West, R. F. (1998). Individual differences in rational thought. Journal of Experimental Psychology: General, 127, 161-188.