自分の言葉とは
ビジネスの現場で、以下のようなセリフを聞くことがあります。
「自分の言葉で語らないと、相手には響かないよ」
この「自分の言葉」とは何なのか。

古垣講師
「自分らしさのある、独創的な伝え方」という意味ではないのです。
「自分の言葉」と対になるのは「借り物の言葉」であり、そのニュアンスを比較してみます。
借り物の言葉
言葉や情報を、深く理解せずに話の中で用いること。言葉や情報の「理解」が表面的なものに留まり、「適切なニュアンスで使うこと」や「相手の理解度に合わせて言い換えること」が難しい。
自分の言葉
言葉や情報を「意味」「使われ方」などから多角的に深く理解した上で、話の中で使える状態。
「適切なニュアンスで使うこと」や「相手の理解度に合わせて言い換えること」が可能。

古垣講師
まず、「言葉」や「伝えたい情報」を深く理解しているかが、「自分の言葉で話す」ことの土台になります。
例えば、DX(デジタル トランスフォーメーション)という言葉がありますが、これは直訳すると、「デジタル」で「変革」。
これだけだと、表面的な理解に留まります。
そこで他の角度からも、意味を検証してみます。
例えば、似た表現である「デジタライゼーション」は「業務の部分的なデジタル化」を指します。
比較すると、DXは「デジタル技術でビジネスの仕組みを丸ごと変える」といったニュアンスで使われます。
このように考察することで、DXという言葉を、深く理解できます。

古垣講師
そもそも、言葉は他人が考えたものなので、「その多くは借り物に過ぎない」という解釈もできます。
借りた道具に過ぎないからこそ、自分が想定しない機能が潜んでいることがあります。
そんなときに、「理解を深めれば、道具に精通できる」ように、言葉についても理解するほどに、ニュアンスや扱い方が分かっていきます。
それが「借り物感」を脱却できた状態(=「自分の言葉」を使えている状態)です。
「自分の言葉」は、なぜ必要なのか
ポイント |
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・物事の理解が深まり、他人にわかりやすく話せる ・周囲の信頼感や安心感につながる |
前項で紹介したように、言葉や情報のイメージを深く掴んだり、わかりやすく言い換えたりできるのが「自分の言葉」にできているということ。
わかりやすさから、自分と周囲との間に、円滑なコミュニケーションが生まれます。

古垣講師
「この人なら、説明を任せても大丈夫」という周囲の信頼感にも繋がりやすいです。
自分の言葉を磨くには
ポイント |
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・言葉や情報を見聞きしたら、「つまり、どういうこと?」を考える ・アウトプットの機会を増やす ・あとから、「よく伝わったか」を振り返る |
言葉や情報を見聞きしたら、「つまり、どういうこと?」を考える
自分の言葉を磨くために、本を読むことなどは、あまり重要ではありません。
むしろ、日常で触れる言葉や情報について、その意味や使われ方を深く理解すること。
さらに、別の言葉で「つまり、どういうこと?」と、表現できるかどうかを検討してみましょう。

古垣講師
「つまり、どういうこと?」と言い換えることで、意味と深く向き合いやすくなります。
アウトプットの機会を増やす
アウトプットの機会を増やすのもお勧めです。
例えば日常において、
・友人や家族、職場の人に向けて、よりわかりやすい伝え方を工夫する。
・本の感想をブログやSNSに書いてみる。
このように、言葉を使う場面を増やして、そこで適切な表現を考えようとする気持ちが大切です。
表現の仕方を悩んだり考えたりするほどに、言葉が自分になじんで「借り物の言葉」から抜け出しやすくなります。
あとから、「よく伝わったか」を振り返る

「自分の言葉」というフレーズは、ときに「自分のオリジナルの表現」を指すのだと誤解させることがあります。
確かに、「わかりやすく言い換える」際は、もともとの言葉を自分なりにアレンジする面もあります。
ただ、あくまでも、「他人が理解しやすいアレンジができる」ことが肝心です。

古垣講師
独創性のある表現より、「相手のわかりやすさ」を優先することがオススメです。
そのためには、自分なりに言い換えたあとで、聞き手の反応を観察して、フィードバックを得るのも良いと思います。
客観視するから、表現をわかりやすくアレンジしやすくなります。
まとめ
この記事の後半で紹介した、「自分の言葉を磨くポイント」は以下です。
・言葉や情報を見聞きしたら、「つまり、どういうこと?」を考える ・アウトプットの機会を増やす ・あとから、「よく伝わったか」を振り返る |
これらは大げさなことではなく、普段の受信や発信に、意識的に取り組むことでもあります。
言葉や情報を深く掴み、相手のわかる表現に変えて伝えられること。
それは、人前で話すときの自信にも繋がります。