話し方のアドバイスでは、思いがけないことを指摘されることがあります。
以前、私が「心に残ったこと」というスピーチを披露する場で、自分の専門分野のネタを語ったところ、主催者からは「そーんなものが、何の役に立ちますか」と冷やかに笑われたことがあります。
当時は正直、「きついコメントだなー」と感じました。でも今思うと、「聴衆に合わせて話を選ぶ」配慮がなく、好きなコトを好きなように話しただけ。これは、当然の評価だったと思います。
当時を振り返ると、私は「人からフィードバックをもらって認識のズレを調整していく」経験が足りなかっのだな、と痛感します。
人間は、他人からのフィードバックで自分の盲点を知り、「自分の視界を広げていく」ことができるのですよね。
(これは、フィードバックに客観性や専門性がある場合の話ですが)
フィードバックがどのように役立つか、心理学の世界に「ジョハリの窓」という考え方があるので、以降で解説します。
ジョハリの窓とは
「ジョハリ」とは提唱者の名前が由来です。
アメリカの心理学者の「ジョセフ・ルフト」と「ハリントン・インガム」が1955年に提唱しました。
「自分自身への理解」や「コミュニケーションの在り方」を見つめるために、使われます。
ジョハリの窓では、4つの領域(窓)で、自分を振り返ります。
さらに、以下の図のように、開放の窓を広げていくことで、自分の在り方を変えられる、というものです。
開放の窓を広げるためには、以下3つの方法があるとされます。
1)フィードバックで盲点の窓を狭める
「盲点の窓」は「自分が知らないけども他人は知っている」こと。他人からフィードバックをもらうことで、開放の窓を広げながら、盲点の窓を狭めていくことができます。
2)受容と自己開示で秘密の窓を狭める
「秘密の窓」は「自分だけが知っている」こと(他人の目から隠したいことも含む)。自分をありのままに認め、オープンにしていくことで開放の窓を広げ、秘密の窓を狭めていくことができます。もちろん、秘密にしたいことを、すべて人に見せる必要はありません。ただ、苦手意識を認めて受容することで、「緊張感を知られても良い」など、気持ちが楽になることがあります。
3)未知の窓を狭める
「盲点の窓」と「秘密の窓」を狭めると、「未知の窓」も狭まります。(=新しい自分と出会えます)
盲点の窓と秘密の窓について、詳しく
ここでは、盲点や秘密の窓を狭める方法について、詳しくご紹介しています。
盲点の窓とフィードバック
「盲点」とは、自分が目を向けていなかった部分。
例えば、声の音程が一定だと、単調に聞こえます。
だけど、「声を音程で捉える」ことは、知識がまったく無い場合は、自分でやるのは困難です。
(音楽的な素養がある人なら別ですが)
フィードバックを受けると、その知識と、自分にどのように適用できるのかが、客観的に分かりやすくなります。
また、もう一つ「盲点」に繋がるのは、解像度(細かく見る程度)が低くて、ぼんやりとしか把握していなかった部分です。
解像度は重要な概念ですが、精細に見つめるほどに、自分が漠然と把握していたことが分かり、学びが深まります。
例えば、「話が長い」「まとめる(要約する)のが苦手」というお悩みがあります。
これは、まさに情報を漠然としか見られていないことが、多い事例です。
このように、話し方の盲点を、フィードバックを得ることで、明らかにしていけるのです。
秘密の窓と自己開示
問題となるのは、「話そうにも話せない」という悩みを抱えている場合です。
シャイな人は、「自分の話をすることに慣れていない」ことや「自分の感情を奥に潜めて打ち明けられない」ことも多いのです。
自然と、秘密の窓の領域が大きくなりがちです。
これには、もともと他人に自己開示しづらい性質を持っている人も一定数いらっしゃいます。
ただ、一つ言えるのは、自分の体験や思いを「材料」にして、話す感覚を磨くことが大切ということです。
何でも話そうとするから、秘密を打ち明けづらくなります。
そうではなく、自分の内にあるものは話の材料と考え、適切に公開する範囲を検討すること。
実は、スピーチを使ったトレーニングなどは、こうした練習に適しています。
まとめ
ジョハリの窓を元に「フィードバックを得て、盲点を知る」、そして「秘密を受容し、適切に自己開示」をしていく点について解説いたしました。
これらはテクニックとして、磨くことが可能な面が大きいです。
ぜひ、話し方教室でそのコツを体験して頂けたらと思います。
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