場面を、イメージしてみてください。
会社の社長が「新年の挨拶」として、従業員一同に向けて話をしています。
当然、挨拶を簡単に述べて終わりではないと思います。
従業員に向けて、昨年の労をねぎらったり、一年の目標を共有する話をしたり、
なにかしら、中身のあるスピーチを目指すのが通常です。
そもそも、なぜこうしたことが必要なのでしょうか。
社会では、立場が変わるにしたがって、「周囲からの期待」に応えるだけの話を求められることがあります。
それが重荷と感じる人も、非常に多いものです。
しかし、聞き手の立場になると、こんなことを考えないでしょうか?
・いわば、組織の舵取りを任せるわけだけど、この人と一緒の船に乗って、大丈夫かな?
・私たち聴衆の時間を拘束するからには、意味のあることを話してくれるのだろうか?
聞き手の皆さんにとって、上に立つ人の存在は、働く際のモチベーションを保つ一助となることがあります。
また、組織外の聴衆がいる場合、さらに見る目は厳しくなる傾向があります。
立場のある人が、どのように考え、意思伝達をしているか。
その印象が累積していくと組織そのものの信用に繋がっていくことさえあります。
話し手は、まず以下のポイントを押さえておきましょう。
「聞き手は誰か」
専門用語などは、聞き手に向けてどの程度使って良いかを吟味しておきましょう。
また、以下はスピーチビギナーに向けて念のため。
「日頃は格別のご高配を賜り…」などの形式的な挨拶は、聞き手が誰かによって、必要度が変わります。外部のお客様か、組織内部の聴衆なのか点検してみてください。
ちなみに、聴衆が誰か、その顔を思い浮かべながら原稿を考えると、スピーチの恐怖感が和らぐことさえあります。
(聞き手か誰かを想像できないときに、余計な不安を抱きやすいからです)
「具体例を含めた話をする」
具体例がない話は、観念的な話になり、聞き手が引き込まれません。
自己陶酔や説教を聞かされた印象になることさえあります。
進めている事業やお客様への想い、今年一年の計画など、聴衆が関心をもてる具体的な情報を少しでも盛り込みましょう。
ただし、無駄なく重複感なく、シンプルに仕上げることをお忘れなく。
「なるべくメッセージの数を増やさずに話をする」
「ポイントが3つあります」と語る方法は、聞き手がメモを用意していない状況では、話が心に残りません。資料を配布するプレゼンならまだしも、スピーチの場合は、できればメインのメッセージは一つ。増やしても二つまでにするのは当然のことです。
ただ残念ながら、社長の年頭挨拶などでは、ポイントを3つに分けて伝える方式が増えています。
話し手としては満足できる情報量になるのですが、聞き手は3つ目の話を聞くころ、1つ目の話を忘れます。
そのため、あまりオススメできません。
ビジネスでよく「選択と集中」という言葉が使われますが、スピーチの構成にも同様の戦略が必要です。