「言いたいことが3つあります」と示してスピーチする人をわりと多く見かけます。この方法は、スライドや資料があれば、聞き手はラクに内容を理解できます。ただ、視覚要素がなく、耳だけで聞く場合には、話し手も聞き手も内容を覚えるのに苦労します。
そもそも話し手が要素を列挙する伝え方は「水平展開」に基づきます。例えば、『かき氷』について語るとしたら、「美味しさ」「創意工夫の面白さ」「涼しさを味わえる」など、伝えたいことを次々と思いつくことを列挙することです。これは「ネタを探す」ための発想法に適しています。ただ、思いついた全部を話に盛り込むと内容が散らかり、聞いている人は辛くなることがあります。
話す側の気持ちとしては、2~3分の話をするのが大変なので、色々な要素を入れたくなるかもしれません。
ただ、「垂直展開」で話を考えると、ひとつの要素でも長い話ができるようになります。
これは、最初から最後まで1本の線で繋がるような話し方です。
例えば、かき氷の『創意工夫の面白さ』に着目するなら、自分に以下のような質問をして、話を記憶から掘り返します。
↓
「そもそも何があったのか」
「どんな場面を見て、どんな感情をもったのか」
「体験してどうだった」
「体験の前後で感情の変化は」
情報を掘り下げる質問は、粘って考えるほど浮かんできます。
質問によって、情報を深く掘り出せたら、結論にマッチする情報を残しながらスピーチを作りましょう。
そうすると、かき氷の“創意工夫の面白さ”について、ストーリーに仕立てた話ができます。
★一つのストーリーに仕立てた例
かき氷が好きな理由は、創意工夫が面白いことです。
みなさんは、「たかが、かき氷じゃないか」と思われるかもしれません。
でも、今は色々なかき氷があるんです。
私がそのことを知ったきっかけは、ある本に出会ってからでした。
書店でなにげなく本を眺めていたら、突然、あるタイトルが目に入って来たんですよね。
その名も「一日一氷」。暦とともに、365種類のかき氷が紹介された変わった本でした。
思わず手に取って読んでみると、見たこともないような面白いかき氷が載っていました。
かき氷に砕いたパイ生地が刺さっていたり、表面を焼いて焦がしたものもありました。
「かき氷にこんなに創意工夫があるって知らなかった・・」
私はそう感じて、実際に味わってみたくなって、その中の一店舗に行ってみたんです・・・。
(以下、実際に味わった体験談が続く)
このあと、実際にかき氷を味わった体験談を続ければ、『創意工夫の面白さ』という一点が、話を聞くほどにわかるストーリーになります。
一つのことについてじっくり語れると、長い話をするときも、分かりやすく深い話ができるので自信をもてます。垂直展開で考えた話は、話があちこちに飛ぶ印象がありません。そのため、聞き手が楽に話を聞けます。
話す側にしてもストーリー仕立てのほうが、エピソード同士が関連性をもっているので、話を覚えやすくて楽です。
スピーチや責任のある発表をする際に、非常に役に立つ技法です。
なお、原稿を書き進めるうちに、だんだんと自分自身の伝えたいこと(=結論)が変わってくることがあります。
『創意工夫の面白さ』ではなく、『作り手の熱心な工夫は、心を動かす』『かき氷は創造性を味わう』など、結論がわずかに変化していくのです。その場合は、新たに考えた「結論」に向かって、全体がきれいに流れるよう、書き直す必要性があります(場合によっては、垂直展開をやり直すことも)。
案外、人の思いは漠然としていて、あちこちに飛びやすいものです。
それを素直に漏らしてしまうと、聞き手には話がずれた印象になります。
一つの結論に落ち着くよう、余計なものを省くことが聞き手にストンと理解される話し方に繋がります。
Copyright secured by Digiprove © 2018