更新日:2022年1月27日|公開日:2018年9月6日

緊張するとパフォーマンスが落ちる人

脳には、ワーキングメモリ(作業記憶)という働きがあると考えられています。

情報を一時的に記憶に留めることや、同時に複数の処理ができます。


人前で話す

~ワーキングメモリの使い方の例~

・ネタを覚えて、人前で話す

・話しながら、途中で軌道修正をする

・準備した内容以外で、アドリブを思いつく

・質問されたことを意識しながら回答を考える


シカゴ大学のシアン・バイロックらの研究では、不安を感じる人はワーキングメモリを消費し、本番時のパフォーマンスが落ちるとされています。(※1)

例えば話す場面で、以下のような思いが浮かんでいないでしょうか。

「声が震えるかも」
「私はもともと話すのが苦手なんだよな」
「話を忘れないか心配」

こうした不安が、本番時のパフォーマンスを落とすのです。

※1参考文献:
UChicagoNews|A change in perspective could be all it takes to succeed in school
・A.Mattarella-Micke et al., “Individual differences in math testing performance:Converging evidence from physiology and behavior,” The Annual Meeting of the.Association for Psychological Science. Chicago, May 2008

不安を打ち消すため、内容を考え過ぎる

話の内容を懸命に考えてしまう

不安が頭にあるとき、ついやってしまうのが、話の内容を増やしてしまうこと。

ご本人からすると、本番に向けて真剣に準備をしています。

しかし、適切な情報整理法を知らない場合は、情報量がいつの間にか増えていることが多いものです。

その結果として、「話を覚える・思い出す」ことでワーキングメモリを使い切って、本番で発声やジェスチャーなどに意識が回らない人がわりといます。

本番で話すチカラを発揮するための心構え

本番では、今そこでやること(発声や姿勢、ジェスチャー、目線)に意識を向けること。そのコツはレッスンでもご紹介しています。

まずは話をシンプルにするために、以下の点検をしておきましょう。

メッセージを絞る

大まかなテーマに基づいて話をするのではなく、「何を伝えたいか」というメッセージを絞ることが大事です。

中には思考がまとまらず、あれもこれもと並列的に話すケースもあります。

その場合は、大まかなテーマに基づいて話をしていることが多いです。

メッセージの絞り方は、以下のページも参考になさってください。


スピーチは冒頭のボリュームを加減する

聞き手にわかりやすいことは大切ですが、背景を語りすぎて、冒頭の情報量が増えてしまう人がいます。

以下の例で、太字の部分を見てください。

NGのスピーチ例

美味しいナポリタンをつくるコツについて話をします。

私が好きなのは、喫茶〇〇が広めている作り方です。

喫茶〇〇というのは、中野にある開店30年ほどのお店で、ファンが多いことで有名です。マスターの山田さんはもともとホテルの料理人で、簡単に美味しく味わえる作り方について、テレビでも紹介されています。

例えば、ナポリタンは、ケチャップとウスターソースを6:1くらいの割合で混ぜておくんです。あとはフライパンで具材やパスタと一緒に炒めるだけです。
ウスターソースを加えた分、甘みが奥深くなって、お店で食べた時のような味わいがします。

以上、美味しいナポリタンをつくるコツ、ウスターソースを隠し味に使うという話をしました。

「美味しいナポリタンをつくるコツ」が話の中心のはずですが、冒頭で「店」や「店主」の情報を語り過ぎています。

以下のようにアレンジが可能です。

わかりやすいスピーチ例

美味しいナポリタンをつくるコツについて話をします。
それは、ウスターソースを隠し味に使うことなんです。

もともとは、ナポリタンで有名な喫茶〇〇さんがテレビで紹介した情報なんですが、自分でもできそうだなと思ってやってみました。

ケチャップとウスターソースを6:1くらいで混ぜておきます。あとはフライパンで具材やパスタと一緒に炒めるだけです。

仕上がったナポリタンを食べてみると、ウスターソースを加えた分、甘みが奥深くなって、お店で食べた時のような味わいがするんです。

以上、美味しいナポリタンをつくるコツ、ウスターソースを隠し味に使うという話をしました。

店の情報は1行程度、入れるに留めました。
後半に語っているのは、「ナポリタンを作った」という自分の直接的な経験です。
こうした情報は「経験記憶」と呼ばれ、思い出すのが容易で語りやすい情報です。

一方でお店や店主の情報は、データ的な「知識記憶」と呼ばれる情報です。
覚えることや思い出すことが大変で、ワーキングメモリも無駄に消費してしまいます。

冒頭で知識記憶を語る量は軽めにしておいて、自分自身の経験を中心に語ると、スピーチは楽に話せます。

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執筆者

【執筆者】古垣博康
【プロフィール】株式会社ワクリ代表。NHK(総合、Eテレ)の番組制作や番組サイト編集に携わりながら、話し方団体で講師を務める。現在は話し方講師、スピーチライター、認知行動療法&産業カウンセラー。
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