「原稿を読むだけでも緊張する」と、しばしばお聞きします。
実は「読むだけ」と言えど、そんなに簡単な作業ではないのです。
例えば、自分が相当に慣れないことをする際、「慣れないと難しいな」「不器用だな」という感覚に陥ることは無いでしょうか。
それと同様です。
発表用に書き上げた文章を、一言一句、目で追いながら話す。
これは頭が忙しく働くため、内容を覚えて話すよりも、負荷が高く感じられる人もいます。
例えば、心理学で「注意資源」という考え方がありますが、人の集中力には限度があります。
その限度を超える作業になりやすいのが、原稿を読む作業。
脳の余力が無くなると「話す途中で噛む」「言葉が詰まってしまう」なども増えます。
また、苦労している様子を人前で見られることで、余計に焦ったり、緊張したりすることはないでしょうか。
「自己注目」と呼ばれますが、緊張しやすい人は、もともと自分に意識が集中しています。
自己注目が強い状態のまま、不器用さを感じる状況に陥ることで、余計に緊張感が強まる可能性があります。
さらに、完璧主義、正しいことを求めすぎる、過去の失敗経験があるなどすると、人前で「評価モード」と呼ばれる他人の反応を気にする状態に陥ります。
すると、そもそも人前に出ること自体がストレスで、緊張から生まれるドキドキ感、手や体の震えなどが、不安症状として加算されていることもあります。
対処に役立つトレーニング
意外と思われる方が多いのですが、まず注意資源を費やさないで語れる原稿作りのコツを学ぶこと。すると、本番での焦りが減る人が多いのです。
さらに、認知行動療法では、自己注目を和らげながら、緊張しやすい思考癖と、評価モードに陥る習慣を改善していきます。
具体的には、自分の奥深くにある思考癖をカウンセラーを介して可視化しながら、「自分に根付いたイメージ」「聞く人の評価や反応に意識を向ける癖」などを改善します。
また、合わせて心身のリラクセーション法を身につけていくので、警戒態勢になっても過剰な手や声の震え、ドキドキ感など反応が起きづらくなります。
実際に、話す余裕が生まれて、本番で余裕をもって話せる状態を自覚する方が多いです。
それまでうまく話せた経験がないと、「はたして、本番で話せるだろうか」という不安がどこかで邪魔する人もいます。
しかし、トレーニングで実践して頂いたことが自然にできて、「楽に話せて驚いた」というご感想を頂きます。
また、適切なトレーニングを知ることで、その後もどうすれば安定して話せるかが掴めます。