公開日: 2020年3月7日

発声練習でよく使われる「外郎売」のテキストです。練習しやすいよう、縦書き掲載しています。横スクロールをさせながら読んでください。
なお、ルビや句読点などは講師によって付け方が違いますので了承ください。

「外郎売」


拙者親方せっしゃおやかたもうすはお立会たちあいうち御存ごぞんじのおかたもござりましょうが、お江戸えどって二十里にじゅうり上方かみがた相州そうしゅう小田原おだわら一色町いっしきまちをおぎなされて青物あおものちょうのぼりへおいでなさるれば、欄干橋虎屋藤衛門らんかんばしとらやとうえもん只今ただいま剃髪ていはついたして、えんさいとなのりまする。
元朝がんちょうより大晦日おおつごもりまでおれまするくすりは、むかしちんのくに唐人とうじん外郎ういろうというひと、わがちょうたり。みかど参内さんだいりから、このくすりふかき、もちゆる時は一粒いちりゅうずつ、かんむりのすきよりいだす。よってそのみかどより、とうちんこうとたまわる。すなわ文字もんじには「いただき、く、におい」と書いて「とうちんこう」ともうす。
只今ただいまはこのくすりことほか世上せじょうひろまり、方々ほうぼう偽看板にせかんばんいだし、イヤ小田原おだわらはいだわらのさんだわら炭俵すみだわらのといろいろに申せども、平仮名ひらがなをもって「ういろう」としるせしは、おや方円かたえんさいばかり。
もしやお立会たちあいのうち熱海あたみとうさわ湯治とうじにおいでなさるるか、または伊勢いせ御参宮ごさんぐうおりからは、かならかどちがいなされまするな。おのぼりならばみぎかた、おくだりなれば左側ひだりがわ八方はっぽうむねおもてむね玉堂造ぎょくどうづくり。破風はふにはきくきりのとうの御紋ごもん御赦免ごしゃめんあって、系図けいずただしきくすりでござる。
イヤ最前さいぜんより家名かめい自慢じまんばかり申しても、ご存じないかたには、正身しょうしん胡椒こしょう丸呑まるのみ白河しらかわ夜船よふね、さらば一粒いちりゅう食べかけて、その気味合きみあいをお目にかけましょう。ずこのくすりをかように一粒いちりゅうしたの上にのせまして、腹内ふくないおさめますると、イヤどうもえぬはしんはいかんがすこやかになりて薫風咽くんぷうのんどよりきたり、口中微涼こうちゅうびりょうしょうずるがごとし。
魚鳥ぎょちょうきのこ麺類めんるいの食い合わせ、そのほか万病まんびょう速攻そっこうあることかみごとし。さてこのくすり第一だいいち奇妙きみょうには、したのまわることがぜにごまがはだしでげる。ひょっとしたがまわりすと、たてもたまらぬじゃ。
そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。アワヤのど、サタラナしたに、カ歯音しおん、ハマの二つはくちびる軽重けいちょう開合かいごうさわやかに、アカサタナハマヤラワ、オコソトノホモヨロヲ。一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ。ぼんまめ、ぼんごめぼんごぼう、つみたで、つみまめ、つみ山椒ざんしょう書写山しょしゃざん社僧正しゃそうじょう
粉米こごめのなまがみ、ごめのなまがみ、こん粉米こごめの小なまがみ。繻子しゅすひじゅす、繻子しゅすしゅちんおや兵衛へえ、子も兵衛へえおやかへえ子かへえ、子かへえおやかへえ。古栗ふるくり古切口ふるきりぐち雨合羽あまがっぱか、ばん合羽かっぱか。貴様きさまのきゃはんも皮脚絆かわぎゃはん我等われらがきゃはんもかわぎゃはん。しっかわばかまのしっぽころびを、三針みはりはりながにちょとうて、うてちょとぶんだせ。
かわら撫子なでしこ野石竹。のせきちくのら如来にょらい、のら如来にょらいのら如来にょらいのら如来にょらい一寸先ちょっとさきのお子仏こぼとけに、おけつまずきゃるな。細溝ほそどぶにどじょにょろり。きょうのなまだら奈良ならなま学鰹まながつお。ちょと五貫目ごかんめ。おちゃちょ、ちゃちょ、ちゃっとちゃちょ、青竹あおだけ茶筅ちゃせんお茶ちゃちゃっと立ちゃ。

るわ、るわ、何がる、高野こうややまのおこけら小僧こぞうたぬき百匹ひゃっぴき箸百はしひゃくぜん天目てんもく百杯ひゃっぱいぼう八百本はっぴゃっぽん武具ぶぐ馬具ばぐ、ぶぐ、ばぐ、ぶぐばぐ、合わせて武具ぶぐ馬具ばぐぶぐばぐ。きくくり、きく、くり、きくぐりわせてきくくりきくぐりむぎ、ごみ、むぎ、ごみ、むぎごみ、合わせてむぎ、ごみ、むぎごみ。あの長押なげしながなぎなたは、ながなぎなたぞ。向こうの胡麻がらは、のごまがらか、ごまがらか、あれこそほんの真胡麻殻まごまがら
がらぴいがらぴい風車、おきゃがれこぼし、おきゃがれこぼし、ゆんべもこぼして又こぼした。たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりからちりからつったっぽ。たっぽたっぽ一丁だこ、落ちたら煮て食お、煮ても焼いても食われぬものは、五徳ごとく、鉄きゅう、かな熊童子くまどうじに、石熊いしくま石持いしもち虎熊とらくま、虎きす。中にも、東寺とうじ羅生門らしょうもんには、茨城童子いばらきどうじがうで栗五合ぐりごんごうつかんでおむしゃる、かの頼光らいこうのひざもと去らず。ふな、きんかん、椎茸しいたけ、定めて後段ごだんな、そばきり、そうめん、うどんか、愚鈍ぐどん小新発地こしんぼち小棚こだなの、小下こしたの、小桶こおけに、こ味噌が、こあるぞ、子杓子こしゃくし、こ持って、こすくって、こよこせ、おっと合点だ、心得たんぼの川崎、神奈川、保土ヶ谷、戸塚は、走って行けば、やいとをすりむく、三里さんりばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや。小磯の宿を七つ起きして、早天早々そうてんそうそう相州小田原そうしゅうおだわらとうちんこう、隠れござらぬ貴賤群衆きせんぐんじゅの花のお江戸の花ういろう。あれあの花を見て、お心をおやわらぎやという。産子うぶこ這子はうこ至るいたるまで、この外郎の御評判、御存じないとは申されまいまいつぶり、つの出せしゅっせぼう出せしゅっせ、ぼうぼうまゆに、うすきね、すりばち、ばちばちぐゎらぐゎらぐゎらと、羽目を外して、今日こんにちでのいずれもさまに、上げねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っぱり、東方世界の薬の元じめ、薬師やくし如来にょらい照覧しょうらんあれと、ホホ敬って、ういろうは、いらっしゃりませぬか。


オススメの使い方

【初級】最初はゆっくりでも良いので、正確に読んでみる。

【中級】早く滑らかに読む。

【上級】読み込むうちに口上を覚えるので、テキストを見ないで話せるか挑戦。

【その他】スピーチをする前などに、難しい語句だけを使って滑舌の練習をしてみても。
~例~
きょうのなまだら 奈良ならなま学鰹まながつお
書写山しょしゃざん社僧正しゃそうじょう
・あの長押なげしながなぎなたは、ながなぎなたぞ


この記事について

【執筆者】古垣博康
【略歴】株式会社ワクリ代表。NHK(総合、Eテレ)の番組制作や番組サイト運営に携わりながら、話し方教室で講師を5年間担当。
現在は話し方のプロアドバイザーとして、レッスンやカウンセリングを開催。
産業カウンセラー、認知行動心理士(認知行動療法カウンセラー)。家族は妻と子、猫2匹。
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