自分の言葉とは
ビジネスの現場で、以下のようなセリフを聞くことがあります。
「自分の言葉で語らないと、相手には響かないよ」
この「自分の言葉」とは何なのか。

古垣講師
「自分の言葉」と対になるのは「借り物の言葉」であり、そのニュアンスを以降で比較してみます。
自分の言葉
「自らの体験を踏まえた話」や「他人に委ねず、自分で考えた話」をすること。「自分の内側から言葉が生まれる」ような実感を伴うことがあり、生き生きと話せる。
借り物の言葉
「他人の考え」や、「世間的によくある意見・表現」に沿って話すこと。台本を読むような、硬い雰囲気の伝え方になりやすい。

古垣講師
「本から学んだ情報」をそのまま話すことも、「借り物の言葉」の印象が伴うことがあります。
例えば、当会では、「意見を考えて話すことが苦手」という悩みを、よくご相談頂きます。
自分の意見を考えることが苦手で、「ありきたりなこと」しか話せない。
これは、「自分の言葉」よりも、「借り物の言葉」を使うことに慣れている、とも言えます。

古垣講師
ただし、「借り物の言葉で話す」ことは、必ずしも悪いこととは言えません。
例えば式典スピーチにおける「定型的な挨拶」も、借り物の言葉だと言えます。
これは「場の雰囲気」を損なわない表現として有効に活用できるため、「借り物の言葉がすべて問題」という訳ではありません。
ただし、話すチカラを高めるためには、「自分の言葉で話す」ことに慣れるのが望ましい面があります。
それは、以下のメリットがあるからです。
「自分の言葉で話す」ことのメリット
1)「物事と深く向き合いながら考える」ことが習慣になる
例えば、「A案とB案のどちらを選ぶか」という選択の際も、自分が体験した事実に照らしてみると、より深く考えて答えることが可能です。
体験にもとづいて現実感のあるイメージを膨らませ、より詳細に検討して答えることができます。
また、他人に判断を任せるのではなく、「自分自身で判断ができるよう、考えを巡らせる」ことも、「自分の言葉で話す」ことに繋がります。

古垣講師
以上の点を日常的に意識すると、「物事と深く向き合いながら考える」ことが習慣になります。これは自分自身の成長にも繋がります。
2)人を動かす力が、言葉に宿る
上司が部下にアドバイスをするときも、自身の体験を交えて「自分の言葉」で伝える場合と、教科書的な知識を伝える「借り物の言葉」では、影響力が変わります。
「自分の言葉」で話すと、話し手が深く考え、本心から語る様子が伝わり、聞く人の心に響く話にもなりやすいです。
そのため「組織においてリーダーシップを求められる人」には、まさに「自分の言葉で話す練習」はお勧めです。

古垣講師
「自分の言葉」を生み出す作業は、最初は手間に感じるのですが、慣れてくるとスムーズに使えるようになります。
「自分の言葉」で話すときの注意点
当会でも、スピーチ作りを通して、自らの体験や考えを踏まえた発信を練習して頂いています。
即興で話すトレーニングにもなり、自信が付きやすいメニューです。
ただし、注意点は「自分だけが納得する話」や「多角的な検証を踏まえない話」にならないよう、意識することです。
「話の客観視」に慣れていないと、自分の体験や考えに根ざす分だけ、偏った意見に繋がることがあります。
できれば、他者の客観的なフィードバックを交えつつ、「自分の言葉で話す」練習を積んでみるのがお勧めです。



【執筆者】古垣博康

