更新日:2025年10月19日|公開日:2023年5月19日

サイキングアップとは、スポーツ心理学の分野で考えられた、鼓舞の技術

例えば、スポーツの試合前に、選手が円陣を組んで「いくぞー!」と掛け声などするシーンがあります。それがサイキングアップの一例です。

人は気持ちが高揚すると、エネルギーを出しやすい状態になります。その効果を狙った鼓舞がサイキングアップです。

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古垣講師

スピーチでも、サイキングアップ(鼓舞)の効果を狙うことができます。

2023年WBC決勝前、大谷翔平選手の声出しは、選手たちの気持ちが一つとなる話が展開され、サイキングアップ的な影響力を持つ、スピーチになっていました。

WBC決勝前、大谷翔平選手の声出し全文の書き起こしと、話し方のポイント詳細。最後にサイキングアップの箇所あり。

(図の注釈は古垣が加筆)

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古垣講師

ただ気合を入れるのではなく、無理強いさせる訳でもなく、心に訴えかけてチームを前進させる。見事なスピーチだと私は感じます。

スピーチでサイキングアップをするなら

具体的にコツを挙げるなら、スピーチが以下のような話に向かうと、サイキングアップの流れを作りやすいと感じます。

  • ・「チームや組織の目標を再確認」
  • ・「取り組みがどのような未来に繋がるかを語る」
  • ・「取り組みの社会的意義を語る」

これらは「役職のある人が、スピーチでよくやっていることだ」と感じられるかもしれません。

ただ、注意点があるので、次のポイントをご覧ください。

人を鼓舞するときの注意点

聴衆の思いを無視して、一方的にサイキングアップをするのは危険です。

聴衆の心が話し手から離れていくためです。

本来、スピーチは聞く人の気持ちと伴走しながら、メッセージや提案を伝えるものです。

大谷選手の声出しも、まさにそうした伝え方になっています。

サイキングアップを使う以前に、聴衆の気持ちに共感ができること

また、その思いを言葉に乗せて、話を構成できること

こうした土台があって初めて、サイキングアップのような影響力のあるスピーチを作れるようになります。

自分がムードの起点となる意識で

もう一つ考えたいのが、自分が場のムードメーカーである、という認識です。

というのも、話し手の感情は、話を通じて聴衆に伝わります。

私自身、大いに反省したことがあります。

以前、スピーチの集まりを主催した際、冒頭の挨拶で、私が「天候が心配な話」をしたのです。

すると、参加者がそれぞれが挨拶をする番になって、「自分の心配事」をそれぞれ口にされる流れに。

一度、その流れが作られてしまうと、主催者としてムードを変えるのにかなりエネルギーが必要でした。

暗いムードにさせるのではなく、聞く人の足取りを軽くし、前に進む意欲を引き出す

そうしたムードを醸成することも、話し手に託されやすい役割の一つかもしれません。

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古垣講師

「ムードの起点となる」ことに慣れると、サイキングアップを適切に使うことにも慣れていけます。


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執筆者

【執筆者】古垣博康
【プロフィール】株式会社ワクリ代表。NHK(総合、Eテレ)の番組制作や番組サイト編集に携わりながら、話し方団体で講師を務める。現在は話し方講師、スピーチライター、認知行動療法&産業カウンセラー。
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