| こんな悩みはありますか? |
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| 原稿を読まないと、人前で話せない。 |
| 原稿無しでは人前に立つことが不安。 |
| 暗記して話すことが難しい。 |

古垣講師
こうしたお悩みはとても多く、「なぜ他人は覚えて話せるのだろう」と不思議に思う人も少なくないです。
この記事では、緊張時に原稿を頼ってしまうのはなぜか、その対策も含めて紹介します。
緊張時に話を思い出しづらくなる仕組み
人は過剰に緊張すると、「闘争・逃走反応」と呼ばれる状態に陥ります。
これは、危機に対して交感神経が高ぶり、じっくり理性的に考えた行動ではなく、「闘う、逃げる」といった行動をとりやすくなる心身の反応です。
理性的な脳機能が低下して、「認知資源」と呼ばれる脳の余力も少なくなります。
このとき、話を思い出すための脳の余力が少なくなるのです。
体感的にも、「緊張した場面で話を思い返しづらい人」は、わりと多いと思われます。
ただ、緊張していても、「原稿を見ないで長時間、余裕を持って話せる人」もいます。一体、何が違うのでしょうか。
原稿を読んでしまう原因として、考えておきたいこと
普段から、以下の自覚がある人は、「情報が本番で飛んでしまう不安」を抱きやすいです。
- ・頭が思考や感情で一杯一杯になりやすい。
- ・覚えたことが抜けやすいなど、短期記憶に自信がない。
確かに、こうした性質がある場合も、話を覚えづらいことに影響します。

古垣講師
ただし、私が5,000本以上の「話す原稿」を見てきた経験上、大きな原因だと感じるのが「情報の組み立て方」です。
「原稿無しでは話せない」という人の情報は、「他人が見ても覚えるのが困難」なほど、話の要素が盛りだくさんなことが多いです。
例を挙げると、
「次々と話が移り変わり、1つの要素を浅く描いてしまう」。
これは、一つのブロックに複数のポイントを盛り込むなど、情報を詰め込んでいる状態です。
意識があちこちに向きがちな人に、多い傾向でもあります。
もう一つ多いのが、「心配して、いろいろな情報を盛り込む」。
これは、「伝え漏れていることがないか」「もっと補足したほうが良いのではないか」など、話す内容が増えてしまうケースです。
以上の例は、ご自身にとって、わりとツラい状況を招きます。
心理学者ネルソン・コーワンの研究では、一定の「チャンク(情報の塊)」を超える情報を頭に抱えると、情報を保持できないことが知られています。
原稿作りについて言えば、文字数と言うよりは、「話の要素の数」が多くなるほどに、スムーズに覚えづらくなります。

古垣講師
「話の要素の数が多い」とは、「Aの話をしたら、Bの話もする」という風に、情報の種類が多いことを指します。
対策するなら、垂直展開が鍵
対策としては、そもそも少ない要素に整理して、話の道筋がぶれないようにじっくりと話を展開する。話があちこちに飛ぶ水平展開ではなく、一つのことをじっくり語る垂直展開の技術を覚えること。
すると、原稿を覚えることがスムーズになり、人前でも楽に話せます。
余談ですが、実は、講師の古垣自身、下積み時代は、情報の組み立て方がとても下手でした。効果的な引き算ができないため、思うように伝わらず、苦手意識を持った経験があります。
ただ、マスコミの仕事をする中で、試行錯誤しながら、情報を絞って、大事なことを選び抜いて伝える技術を身に着けてきました。
当会のレッスンでは、適切な情報の組み立て方を、基礎から身につけて頂けます。
今までの習慣を断捨離する気持ちで、ぜひ学び直してみてください。
人前に立つことを楽しめるほど、心境が変わる方が多いです。
参考:
Kuhlmann, s., Piel, M., & Wolf, O. T.(2005) Impaired Memory Retrieval after Psychosocial Stress in
Healthy Young Men.The Journal of Neuroscience, 25, 2977–2982.doi:10.1523/JNEUROSCI.5139-04.2005
Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24, 87-185







【執筆者】古垣博康