更新日:2024年4月15日|公開日:2023年7月16日
こんなお悩みはありますか?
・普段から、深く考えずに話している気がする
・直感的な言動が多く、周囲を説得するのが難しいことがある
・危機を感じやすく、緊張感が生じやすい

深く考えずに話すとは、自分の話を「様々な角度から点検」しづらいということ。その場合に、ディスカッションや、質問に答えながらの対応苦手意識を感じることがあります。

また、考えて話す習慣がないと内容が偏りやすく、説得力をもつ説明などが難しいことがあります。

また、理性によるコントロールができないと、過剰に構えてしまうことが増え、緊張しやすくなることもあり得ます。

以上のような、理性的なコントロールが難しいことを、心理学の世界では「速い思考」と呼ぶことがあります。

以降で詳しくご紹介します。

「速い思考」と「遅い思考」

心理学を学んでいる人には、わりと知られているのが、人の持つ「速い思考」「遅い思考」という2つの側面です。

もともとは、2000年に心理学者のKeith StanovichとRichard Westが二重過程理論を発表。

さらに、ノーベル経済学賞を受賞したDaniel Kahneman(心理学者、行動経済学者)が著書、ファスト&スロー(つまり、速い思考&遅い思考)として広めました。

速い思考と遅い思考を比較すると、以下のようになります。

速い思考(システム1) 遅い思考(システム2)
直感的熟考的
速い遅い
進化的には古いシステム進化的には新しいシステム
無意識的意識的
自動的制御的

参考:Dual-process theories of higher cognition(Evans & Stanovich, 2013)

「速い思考」とは結局なんのこと?

速い思考とは「直感を生かして、深く考えない思考」です。

様々な点検するべきことがあっても、考えることを早めに切り上げて行動に移します

こうした「速い思考」は、太古の世界のように猛獣と出会う状況なら、とても役に立ちます。

猛獣は人に合わせて待ってくれるとは限りません。
だから、人も迅速に判断をくだすほうが、生き残る確率が高まります

しかし、直感的な思考の弱点は、理性的な思考力を失いがちなこと。

例えば、仕事の役割が変わり、理性的な話し方が必要になる場合などは、速い思考のままでは対応が難しいことがあります。

その場合に、次にご紹介する「遅い思考」を身につけることが、お悩みの突破口となることがあります。

遅い思考とは? どう役立つか?

例えば、「24×13」といった問題を暗算で解けるでしょうか。

「うーん、難しい」と感じた人も、しばらく以降にお付き合いください。

色々な暗算の方法はあるでしょうが、頭の中で、「24×3(=72)」「24×10(=240)」を足せば、この計算の答えの312にたどり着きます。

このように複数の情報を思考の際に扱うこと、また、比較したり手を加えながら答えを出すことが、脳に負荷がかかる「遅い思考」なのです。

まさに普段においても、多角的な検討や、数段階の点検を踏まえた思考で、この遅い思考が必要になります。

正確には「遅い思考」というより、「じっくり考える思考」という方が良いかもしれません。

どうトレーニングすれば、話す際にこうした思考ができるのか。
次の項目でご紹介します。

どうトレーニングすれば良いのか

例えば、言葉構築法伝わり方を深く考察すること。内容を思い出しながら話すこと。
こうした「脳に汗をかくような作業に、ステップを踏みながら慣れていく」ことです。

さらに、ビジネス上で点検すべきことを組み入れて、話す練習ができれば、深く考える学びになります。

また、あがりやすい状況でも高反応にならず、理性的に事態と向き合うこと。

緊張という感情を味わいながらも適切な調整法を行うことで、パフォーマンスを崩すほどの緊張から脱することが可能になります。
認知行動療法などで合理的な考え方、捉え方を身に着けていくことも、その一つだと言えるかもしれません。

認知行動療法であがり症改善
あがり症改善 自分と向き合う認知行動療法

当会でも、技術と、心理の両面で理性的な話し方に変わるコツをご紹介しています。

参考文献
ダニエル・カーネマン(2012)ファスト&スロー(上).村上章子(訳)早川書房:東京.

Evans, J. St. B. T., & Stanovich, K. E. (2013). Dual-process theories of higher cognition: Advancing the debate. Perspectives on Psychological Sciences, 8, 223-241.

Stanovich, K. E., & West, R. F. (1998). Individual differences in rational thought. Journal of Experimental Psychology: General, 127, 161-188.

執筆者

【執筆者】古垣博康
【プロフィール】株式会社ワクリ代表。NHK(総合、Eテレ)の番組制作や番組サイト編集に携わりながら、話し方団体で講師を務める。現在は話し方講師、スピーチライター、認知行動療法&産業カウンセラー。
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