「スピーチ」「説明」「司会」「プレゼン」「講義」「講演」など、いずれも原稿を用意するとある問題が・・・。
言葉が、知らず知らず「書き言葉」に、置き換わっていることがあります。

古垣講師
人前で「どうも話しづらい」「うまく伝わっていない」と感じるとき、「書き言葉」の表現が影響していることがあります。
この記事では「書き言葉」と「話し言葉」を比較しながら、話すことに適した言葉のつかい方をご紹介します。
耳に馴染みやすい言葉づかい
以下の表現を比べてみましょう。
A 書き言葉の表現 | 昨日、スーパーに行き、以前から探していた限定品のお菓子を発見。思わず購入した。 |
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B 話し言葉の表現 | 昨日、スーパーに行くと、以前から探していた限定品のお菓子が見つかったのです。私は、思わず購入しました。 |
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Aのような硬い表現だと、エッセイを読んでいるような印象になります。
話として聞く際には、違和感があります。
Bの話し言葉には、会話調のやわらかい印象があります。
こちらは話として聞いても、違和感がありません。
人前では、「話し言葉」で語ることが基本です。
ただし、式典など格式の高い場になるほど、「なんです」→「なのです」に変えるなど、会話調の砕けた表現を整えることは必要です。
一文に情報を詰め込まない
一文とは、「。」で区切るまでの文章。
目で読む「書き言葉」では、一文の中に情報を詰め込むことがあります。
しかし、耳で聞く「話し言葉」では、一文の中に情報を詰め込むと、話を聞くのが大変になります。
以下のA、Bの書き方を比べてみてください。
A 一文の情報量が多い | 昨日、スーパーで以前から探していた限定品のお菓子を見つけ、これはラッキーだとつい購入してしまった。 |
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B 一文の情報量を調整 | 昨日のことですが、スーパーに立ち寄ってみました。 そこで、以前から探していた限定品のお菓子を見つけたのですね。 これは運が良いなと、つい購入してしまいました。 |
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Aの書き方を実際に話すと、聴衆が話を聞き漏らすことが増えます。
目で読む「書き言葉」は、一文に含まれる情報が多くても、読み直すなどして理解できます。
しかし、耳で聞く「話し言葉」は情報が多いと、聴衆が途中で読み直すことができません。
ちなみに、話す側にも悪影響があります。
一文に含まれる情報が多いと、話の道筋を忘れてしまうことがあります。
情報過多の一文を語る中で、混乱したり、次を思い出す余力を失ったりするのです。

古垣講師
論文など文を書くことに慣れている場合、ついつい一文に情報を詰め込みやすくなる人もいます。
わかりやすい言葉の選び方
話し言葉では、聞く人にとって分かりやすい言葉を選ぶことも必要です。
とくに大勢の前で話すときは、注意が必要です。
聴衆の年齢層や知識が多様なため、話し手が通じると思った言葉があまり理解されずに、聴衆を困らせていることが多々あります。
注意したい、分かりにくい言葉を以下にご紹介します。
耳で理解しづらい、漢字の熟語
「漢字の熟語」は本などで読むときは理解しやすくても、耳から音声として入ってくると意味をすぐに理解できないことがあります。簡単な親しみやすい表現に変えたほうが、話の内容や話し手の感情が、聴衆によく伝わることがあります。
修正例)「逡巡」→「ためらった」
意外と伝わらない、略称
大勢の前で話すときは、略称は使わない方が無難です。
略称を知っている人たちには伝わりますが、世代が違う人には伝わりにくかったり、略称を使うこと自体が軽率な印象を与えることがあります。

古垣講師
普段の会話ではよく使う言葉でも、スピーチや発表を聞く人に伝わるか、点検がオススメです
聞き手を放置する、専門的な言葉
「知識がないと理解できない用語」は使わずに、聴衆に合わせた分かりやすい表現に変えましょう。伝える技術は、専門用語を噛み砕くほどに磨かれることがあります。
修正例)「モラトリアム」→「自分さがし」
書くときとは、意識を変えて挑む
ご紹介してきたように、「話す」ことは、「書く」こととは、少し違った伝え方があります。
さまざまな聴衆が話を受け取りやすいように、言葉のつかい方を点検してみてください。
入門編「ラクに話せる文章の基礎」+「本番力が身につく練習法」」
放送業出身の講師が教える、「スピーチを覚えて話す」ための動画レッスン。
自分が覚えやすく、聴衆が聞きやすい言葉の使い方についても、より詳しく解説してあります。