公開日: 2023年10月12日
こんなお悩みはありますか?
本番前に練習を続けずにいられない
準備をあきらめると本番で苦しい
結局、準備はどの程度したらよいのか?

スピーチやプレゼンテーション、説明などは、話す前にどれくらいの練習が適切なのか。実は、その練習量によっては、かえって良いパフォーマンスに繋がりづらいことがあるのです。

過去3,000人以上の話し方トレーニングと、認知行動療法によるサポートの経験をもとに、理想的な話す練習の仕方について解説します。

練習と緊張感の関係性は?

本番での失敗が怖くて、とことんまで練習してしまう。

緊張しやすい皆様から、そうした声をよくお聞きします。

人は緊張感が高まると、交感神経が活性化して「闘争・逃走反応」が起きやすくなります。

これは、「危機が迫っているから、じっくり考えずに、闘うか逃げるか、とにかく行動を起こす」。そうした落ち着きのない状態のことです。

ただ、それを芯から自覚できる人はわりと少ないのです。

例えば、「本番さながらの練習を何度もする」「一言一句、しっかり覚えようとする」など、がむしゃらに練習を頑張ってしまう。

これは前述の「危機が迫っているので、とにかく行動を起こす」という状態であり、実は、自分を制御をできていない状態だと言えます。

この練習のやり過ぎが、なぜ良くないかというと、交感神経の高ぶりが鎮まらず、かえって硬くてぎこちないパフォーマンスに繋がりやすいからです。

適切な練習は必要なのですが、不安からとことん練習をすることは、あがり症の認知行動療法の中では、「安全確保行動」とも呼ばれます。

安全な状態を手に入れたくて、なかば自動的に意識が練習を続けることに向かってしまう。
そうした安全確保行動に陥っていたら、改善するのが望ましい状態です。

一方で、心が闘うことをあきらめてしまうと、「準備を途中でやめる」「話すことを避ける方法を考える」「完全に意気消沈する」などの状態に。

練習のやり過ぎによる硬さは生まれませんが、心が闘っていないので、心身がパフォーマンスを発揮しようとしません。

例えば、面接試験で不合格が続いた人などは、闘う気持ちが低下して、この「あきらめる、逃げる」メンタルポジションになっていることもあります。

そして、練習不足なので、あたふたと対応して、本番を終えてしまう。

結果として話す機会を「心地よいものとは思えない」ので、ますますストレスに感じる人もいます。

お勧めの取り組み方は、ほどほどの闘う気持ちを持つこと

時間を決めて練習するなど、メリハリをつけながら練習をすることがお勧めです。

「そうは言っても、練習をせずにはいられない」という人は、自分のスイッチをOFFにしたい時間は、別のことに没頭する時間を持ちましょう。

運動をする、料理をするなどしていると、没頭することで本番を意識する緊張感が軽減されます。

当会でも、本番を意識しすぎる気持ちを、やわらげるワークを実施しています。

それでも不安な人は、認知行動療法などで自分の心の奥を見つめておくのも良いでしょう。

「自分自身をどこか不器用だと捉えている」など、考え方のクセが、幾重にも潜んでいることがあります。

なお、技術面にはある程度の自信を持つことも推奨です。
「話しやすい、情報の組み立て方」が分かっていれば、練習をし過ぎなくても本番で十分なパフォーマンスを発揮しやすくなります。

むしろ、何度も練習をしなくてはいけないのは、勝手が分からずに自己流で挑み続けて、その不安から緊張に陥っていることがあります。また、そのパターンに気が付かずに繰り返す人も少なくありません。

私がトレーニングの経験からもオススメしているのは、ほどほどの闘争心で、本番を迎えられる状態

緊張は感じながらも、心のどこかで「やってやるぞ」などワクワクできる気持ちになれる状態です。

けっして練習を投げ出さないけれども、「練習をどこまでするか」も自分で制御して、果敢に挑む。

その心地になると、本番のストレスに自分が押しつぶされづらくなります。

執筆者

【執筆者】古垣博康
【プロフィール】株式会社ワクリ代表。NHK(総合、Eテレ)の番組制作や番組サイト編集に携わりながら、話し方団体で講師を務める。現在は話し方講師、スピーチライター、認知行動療法&産業カウンセラー。
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