更新日:2025年9月13日|公開日:2023年10月18日

よく、「情報を3つ並べると良い」といった話を聞くかもしれません。

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古垣講師

ただ、使うべき状況を考えないと、話が印象に残りづらいことがあります。

このコラムでは、3,000人以上の皆様とトレーニングをしてきた成果をもとに、よく伝わる話の構成感について、解説します。

そもそも3つに絞るのはなぜ?

例えばアメリカでは、「Five Paragraph Essay」という教育が根付いています。

Five Paragraph Essayの例
序論(意見)
犬は人の家族の一員になれる
本論(根拠3つ)
1 犬はフレンドリーである
2 犬はルールを理解する
3 犬は人の感情を理解する
結論(意見)
だから、犬は人の家族の一員になれる

「序論1つ」+「本論3つ」+「結論1つ」の、5パラグラフで構成された、文章の書き方です。

このメリットは、根拠を3段構えにして、説得力を出せる点。

また、ポイントが多すぎずに読みやすいこと。

「Five Paragraph Essay」は、実際にアメリカの学校教育の中で根付いているものです。

一方で日本人は、あまり意識せずに3つのポイントを提示する人もいます。
その理由としては、

「3つだとまとまりが良い気がする」

「まとめるなら3つだと聞くので」

こんな風に感覚的な理由がわりと多い印象です。
(なかには、守破離や序破急などの概念を参考に、3つの並びはまとまりが良いと考える人もいます)

ただ、そもそも考えておきたいことがあります。

実際に3つのポイントを耳から聞いた際に、人は全ての情報を覚えられるのでしょうか。

例えば、認知心理学などで「逆向抑制」と表現されるのですが、新しい情報を頭で覚えると、さかのぼって古い情報を思い出すことが困難になることがあります。

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古垣講師

例えば、1つ、2つ、3つと新しい情報を聞くほどに、前に聞いた情報を思い出しづらくなる、というものです。

実際に、当会でも受講生の方の話がどう伝わるかをグループレッスンで点検してきましたが、3つのポイントを含んだスピーチでは、聴衆が1つ目や2つ目のポイントを忘れてしまうケースが多かったです。

ただし、逆向抑制がどれほど起こるかは、話の難しさや、聞く人の一時記憶(ワーキングメモリ)の差も関わると考えられます。

もし、3つのポイントが記憶として残らなかった場合、聞き手の印象には…
「漠然とした、話の良悪」しか、残っていないこともありえます。

次の項目で、その問題の解決法を解説しています。

3つのポイントを効果的に伝える「手段」は?

3つのポイントを聴衆の印象に残したい場合、話だけでなく「資料」や「スライド」など視覚面でも情報を提示すること。

すると、聞く人は頭の中に情報をとどめておかずに、視覚情報を頼りに3つのポイントを振り返ることができます。

あるいは、聞く人がメモを取れる状況なら、3つのポイントを頭の中だけでなく、紙などに記録しておくことが可能になります。だから授業など、たくさんのポイントを伝える場合は、ときどき「メモをとるように促すこと」がとても大事です。

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一方、1つにポイントを絞ることにも、メリットデメリットがあります。次項でその点を解説します。

ポイント1つに絞るメリットとデメリット

1つに絞るメリットは、聞く人の印象に残りやすいことです。

これは様々な情報を共有するというより、自分の考えを1つ伝える場面に適しています。
大勢の人に向けた印象的なスピーチも、まさに1つのメッセージを伝えます。

デメリットとしては、ビジネスの戦略など、多角的な検証を伝えるような場面では、情報性が薄いと判断されやすいことです。

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1つにポイントを絞ることも、どのような話の場面(目的)で使うかが重要です。

まとめ:「話す目的」に合わせて、伝える形式を考える

大まかな目安ですが、以下のような考え方ができます。

3つのポイントを挙げるのが適した場面
・説明、報告(相手がメモをとれる状況)
・プレゼン、講義(資料やスライド、黒板など使用)
・多角的に検証したことを伝える場面(提案の根拠説明など)

なお、資料やスライドがある場合は、3つに留まらず、より多くのポイントを伝えることも可能です。
ただし、3つにまとめれば、情報が拡散的にならない面があります。

1つのポイントに絞るのが適した場面
・スピーチなど、資料やスライドを用意しない話
・聞く人がメモを取らない状況で、情報を伝える場面

また、話の腕を磨くなら、実は「1つのポイントに絞る」技術が重要な意味を持ちます。

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古垣講師

参考として、次項で詳しく解説しています。

考えておきたいこと(話の苦手感を変えるには?)

「選択と集中」という言葉がありますが、最善の選択をすると、さまざまなことに手を出すよりも良い結果を得られることがあります。

ビジネスでも得意分野にチカラを注ぐから、売上が伸びたケースはありますよね。

そうした「選択するチカラ」は、「八方美人的に、あれこれ網羅する」ことよりも難易度が高い技術です。

ただ、そのコツこそが、話の苦手感を変えることが多いです。

話がニガテな人は「ポイントを絞る」「要点の抽出」といった、情報の選択がニガテなケースが多いのです。

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古垣講師

これは、鋭い批評をしたり、ポイントを訴求したりするチカラにも通じます。

だからこそ、情報を抱え込まずに、むしろ情報を選びぬくチカラを磨いておくと、話し方の悩みの改善に役立つことがあります。

スピーチでは、複数のポイントを順列に語るケースもある

ちなみに、複数のポイントを扱う場合に、並列順列という観点もあります。

例えば式典における10分以上のスピーチや、講演などは、いくつかのポイントをうまく順列(順番)で繋げながら、語ることがあります。

その場合は、前提→本論→発展など、ポイントとなる話が順列で繋がるような関係性だと、一連の情報として頭に入りやすいです。

一方で「ポイントが3つあります」など、3つのポイントを並列に伝えることもありますが、この場合はスライド資料があれば、聴衆がラクに聞くことができます。

以上、話の目的に合わせて、ポイントの数を絞る。さらに、印象に残すため、視覚に訴えるなどの手段、あるいは順列か並列などの伝え方を考えるのがオススメです。

執筆者

【執筆者】古垣博康
【プロフィール】株式会社ワクリ代表。NHK(総合、Eテレ)の番組制作や番組サイト編集に携わりながら、話し方団体で講師を務める。現在は話し方講師、スピーチライター、認知行動療法&産業カウンセラー。
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