| こんなお悩みはありますか? |
|---|
| ・他人の気持ちを読みすぎてしまうのか、堂々と話しづらい |
| ・特定の人に、自分の話が伝わりづらいことがある |
| ・相手のことを考えすぎて、遠慮しがちな伝え方になることがある |
本来、「気遣いが上手」なことは、仕事や人生で役に立つチカラです。

古垣講師
他人が困ることを察知し、先回りして対応できる力を持つ人も多いです。
しかしながら、コミュニケーション上のお悩みを自覚され、当会を受講される方もいらっしゃいます。
このコラムでは、お悩みの原因と改善のポイントをご紹介しています。
【原因1】直感的に、気遣いをしてしまう
心理学では「速い思考(直感的)」「遅い思考(理性的)」という考え方があります。(Evans & Stanovich, 2013)
| 速い思考(システム1) | 遅い思考(システム2) |
|---|---|
| 直感的 | 熟考的 |
| 速い | 遅い |
| 進化的には古いシステム | 進化的には新しいシステム |
| 無意識的 | 意識的 |
| 自動的 | 制御的 |
例えば、気遣いが習慣になる人は、経験をもとに直感的、反応的に他人の困りごとを感じ取る人がいます。

古垣講師
感覚的に気遣いのポイントを探してしまう、とも言えます。
これが「速い思考」と呼ばれるもので、比較的、自分がラクにできることです。
しかし、速い思考ばかりに意識が傾くと、脳に負荷をかける意識的な思考(遅い思考)の習慣が乏しくなります。
そうした事情から、意識的に考えるコミュニケーションに、不慣れとなる例があります。
例えば、「情報整理のニガテ意識」。理性的に情報をまとめられないことや、自分の伝えたい要点が漠然としたまま、他人とコミュニケーションしてしまうケースがあります。
また、相手に配慮しすぎて「伝えるべきこと」を正面から話せず、避けてしまう人もいます。
(受け身で、主体性を発揮しづらくなる)

古垣講師
ただ、伝え方が上達すると、自信をもってコミュニケーションができるため、周囲の人にも主体的に関わりやすくなります。
【原因2】特定の人に、自分の話が伝わりづらい
気遣いが上手な人の中には、共感力が高く、他人の意図を読み解くことに慣れた人がいます。
ただ、ご自身には共感力があっても、他人に同じだけの共感力があるとは限りません。
そのため、「自分なら、このように話せば理解できる」と考えて伝えても、同程度の共感力がない相手には、「必ずしも理解しやすいものではない」ことがあります。

古垣講師
自分の言葉が、相手にどのように受け取られるかは、共感力がある人でも読み解きづらいことなのです。
【対処法1】情報の伝わり方を点検
言葉や話の「過不足」や「抽象度」を点検しながら、他人にどのように伝わるかを検討します。
- 「過不足」⋯言葉の多い箇所、少ない箇所のこと。
- 「抽象度」⋯意味がどの程度、漠然と伝わるかを点検すること。
どちらも、最初は他人にフィードバックをもらいながら、詳細に点検すると、自分の習慣に気づきやすくなります。

古垣講師
自分の話の「過不足」や「抽象度」を、自分自身で客観視することは、なかなか難しいです。
【対処法】情報の範囲と深さを適切に設定
感覚的に思いついたことを話してしまう場合は、以下の2つは、論理的に伝えるために考えておきたい点です。
- 1)伝える内容を意識:適切な話の範囲を考える
- 2)具体化:ぼんやりとではなく、どこを深掘りするのかを考える

1)は、水平方向の話の広がりから、どこからどこまでを話すか。
また2)は、1)で決めた話の範囲の中から、どの要素を垂直方向に掘り下げて話すか。つまり、具体例などを交えて、どれだけ詳しくポイントを解説するか。

古垣講師
何に重きを置いて話すと良いのか、意識的に考えやすくなります。
当会でも、以上の伝え方を学び直せるトレーニングを展開しています。
ダニエル・カーネマン(2012)ファスト&スロー(上).村上章子(訳)早川書房:東京.
Evans, J. St. B. T., & Stanovich, K. E. (2013). Dual-process theories of higher cognition: Advancing the debate. Perspectives on Psychological Sciences, 8, 223-241.
Stanovich, K. E., & West, R. F. (1998). Individual differences in rational thought. Journal of Experimental Psychology: General, 127, 161-188.



【執筆者】古垣博康


